2013/04/13

文フリ


大阪文フリ、サークル参加はしないけど二本寄稿してるんでいちおう登場します
だから宣伝します(載せんなボケみたいな問題があったら即消します)
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大阪文フリでおひろめされる、稀風社さんの『稀風社の粉』に寄稿した『外の地平』の一部分です
http://kifusha.hatenablog.com/

「私、感化院に送られてからさ、すぐに脱走して、この町で生きてきたんだよね。お金はなんだかんだでお父さんが送ってくれてたし、何もしなくても生きていけた。だからさ、何もしなかった。魔法使いとしての生き方しか知らなかったし、別の生き方とか、きっと感化院にいたら教えてもらえたのかもしれないけど、抜け出しちゃったし」
「……どうして、抜け出したんですか」
「嫌だったから……誰だって嫌に決まってるよ、大人にむりやり生き方を決められるなんてさ、そりゃあ嫌だよ。でもさ、宙ぶらりんなんだよね。何もしないでも生きてると、どんどん心の鮮度が下がっていってさ……この町には、そういう人、多いよ。私はお父さんがいるからいいけど、他の人たちは生きていかないといけないのに生きていくのに価値を見出せなくてさ、みんな必死にもがいてる。そう考えると、魔法使いの町はすごく平和だったと思うんだ。無気力の毒が蔓延しないような環境だったから」
 アリー俯いて、自分の足元を見つめていた。良い話じゃなかったと後悔した。私は慌てて笑顔を取り繕った。
「いや、あはは、ごめんね、アリーがこっちに来たのをどうこう言うつもりじゃないんだ。ただ、逃げ出した先にも、それなりの疫病が蔓延してるって言いたくてさ、なんか、光って無いよねって。あ、いや、アリーを落ち込ませようなんて思ってないよ、はは、ほら、私って会話下手だからさ」
 私の必死の弁明を見て、アリーはくすっと笑った。会話は下手でも、ふざけた態度をとるのは得意だった。
「あはは、大丈夫ですよ。逃げちゃった以上、もう仕方ないですから」アリーは随分落ち着いたようだった。「わたし、魔法使いを諦めて、勝手に逃げてきちゃって、本当に大変なことをしてしまったと思ってるんです。それはわかってるんです、でも、今、不思議と、ちょっと奇妙なくらい安心しているんです。変ですよね、今まで魔法使いになるために生きてきたのに、全部投げ出して、なのに安堵するなんて……」
 アリーはぽつりぽつりと話し始めた。私は聞き役に徹することにした。
「エリックさんが感化院に行ってしまった時、わたし、エリックさんは本当に頭がおかしくなっちゃったんだと思ってました。でも、今は、ああして錯乱してしまうのもよくわかる気がするんです。逆に、それが正常な反応なんじゃないかって思って……。わたしの他にも、逃げ出した人って最近多かったんです。ほとんどはすぐに捕まるか、森で野垂れ死んでしまうようですが……」

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同じく文フリに出る、食人舎さんの『文学とはROCKである。』に寄稿した『妹がお兄ちゃん大好きすぎて困っているのですが』の一部分です。

「オタクってキモいよね」
 有島になとはそう言った。
「はあ?」僕は思わず間抜けた声を上げた。「どうしたんだよ、いきなり」
 線路沿いの帰宅路を並んで歩く。線路と道路の間には広々とした土地に砂利が敷き詰められ、駐車場として利用されていた。高校と駅を繋ぐこの道は、いつも学生の姿が見られる。
 になとはいかにも真面目そうな表情を作って僕に話しかける。
「いや、オタクってキモいよなあって思ってさあ」
「になとだってアニメ好きじゃないか」
「まあそうだけど」
「なんだよそれ、同族嫌悪?」
「いやそうやって切り捨てちゃうのは簡単だけどね……」
 彼女は苦笑した。どうも彼女の発言の意図が掴めない。
「例えばさあ、エヴァの新作とかまどマギの映画を劇場まで観に行くじゃん? するとそこにはオタクがいっぱいいてさ、みんな開場を待ちながらわいわい談笑してるんだよね。その光景を見てるとさ、オタク死ね! って叫びたくなるんだよね。オタクはキモいから死ねって叫びながら、バットかなんかでオタクを蹴散らしたくなるんだよ。もちろんそんな事は出来ないけど……」
 になとはバットを頭に振り下ろす真似をした。肩の下までふわりと伸びた髪が揺れる。
「ワハハ、なんだそれ」
「それで、普通に映画観て満足して帰るの」
「オタクのくせに群れるな、って事?」
「うーん、別にそういうわけじゃないんだけど……」
「気持ちは分からなくも無いけどな」
「だってさあ、チビで天パでメガネじゃん。どこ見てるのか分かんないし。そのくせしていっぱしの文化人気取りでアニメ観て漫画読んでゲームしてるんだよ。どう考えても気持ち悪いでしょ」
「随分偏ったイメージだな……今時、オタクなんてそんなに珍しくもないだろ」
「ああ、そうだね。最近オタクも一般化したよね」
「インターネットだとライト層とかヌルオタなんて蔑称でよく馬鹿にされてるけどさ」
「それもそれでキモいけどね」
「じゃあなんだ、DQNとかギャルみたいなイケイケ系が好みなのか?」
「はは、そんなわけないよ」


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