2013/04/20
短歌とか俳句
人並みに短歌や俳句など詠むこともあるので気に入ったのまとめる
適宜追加する
短歌
愛のある南の国の死体にも抗う北の星条旗の金
広大なプラスチックを踊る手の形而上的強い馬たち
みなさんが期待するので仕方なくヒップホップの王になります
煙から届く抽象の追悼は詩人の音の亡骸に臥す
草稿を書き込み尽くす執着のプレス技術の絶対遮断
塗装路を歩く幻視の上昇と、善良市民の無垢な挨拶が、、、
散った馬、馬具を叩かれ消える馬、雄々しく駆ける馬の空間
実際のところやっぱり古式だよ 新しいのは格好良いよね
サア行こう、善き人倫の満ち満ちた戸塚宏の夢見た世界へ
善良な泥の煙の国民の揺れるうねりの湿度の夢よ
人類のうようよしてるいろいろとなにもわからぬわがままな死よ
温かい座敷童子の愛は絶え人の天使は声色を見る
うきうきの春の機関の躁うつの、フリルリボンで貴様を殺す
考えろ、よく考えろ、その脳で 芋から人は生まれ得るのか
やわらかさ、鉄の駆け寄る午後の死がナメた貴様の主体を壊す
帝都では輝かしいね、だけどまあ代替手段はそれなりにある
貴様らは堕落に価値を規定する、文化レベルはされど落ちぶれず
春がきた、部屋が淀む、働くぞ、働きたいよ、働きたいよ、
俳句
「見て、自殺」「また起こったね」「うんざりね」
脈々と脈々々とアイエエエ!!!
あわわわわ 鉄の駆け寄る 終わりかな
安穏のゆらゆらしてるねりねりよ
「うるさいよ」「もううんざりだ!!」「隠居しよ?」
ねりねりの音する壁を嘗めるねり
生活よ、時間は強い つよいんだ
肩たたき ああ肩たたき 肩たたき
歯を磨け 座布団を敷け ゆっくりと
2013/04/13
文フリ
大阪文フリ、サークル参加はしないけど二本寄稿してるんでいちおう登場します
だから宣伝します(載せんなボケみたいな問題があったら即消します)
買ってください
大阪文フリでおひろめされる、稀風社さんの『稀風社の粉』に寄稿した『外の地平』の一部分です
http://kifusha.hatenablog.com/
「私、感化院に送られてからさ、すぐに脱走して、この町で生きてきたんだよね。お金はなんだかんだでお父さんが送ってくれてたし、何もしなくても生きていけた。だからさ、何もしなかった。魔法使いとしての生き方しか知らなかったし、別の生き方とか、きっと感化院にいたら教えてもらえたのかもしれないけど、抜け出しちゃったし」
「……どうして、抜け出したんですか」
「嫌だったから……誰だって嫌に決まってるよ、大人にむりやり生き方を決められるなんてさ、そりゃあ嫌だよ。でもさ、宙ぶらりんなんだよね。何もしないでも生きてると、どんどん心の鮮度が下がっていってさ……この町には、そういう人、多いよ。私はお父さんがいるからいいけど、他の人たちは生きていかないといけないのに生きていくのに価値を見出せなくてさ、みんな必死にもがいてる。そう考えると、魔法使いの町はすごく平和だったと思うんだ。無気力の毒が蔓延しないような環境だったから」
アリー俯いて、自分の足元を見つめていた。良い話じゃなかったと後悔した。私は慌てて笑顔を取り繕った。
「いや、あはは、ごめんね、アリーがこっちに来たのをどうこう言うつもりじゃないんだ。ただ、逃げ出した先にも、それなりの疫病が蔓延してるって言いたくてさ、なんか、光って無いよねって。あ、いや、アリーを落ち込ませようなんて思ってないよ、はは、ほら、私って会話下手だからさ」
私の必死の弁明を見て、アリーはくすっと笑った。会話は下手でも、ふざけた態度をとるのは得意だった。
「あはは、大丈夫ですよ。逃げちゃった以上、もう仕方ないですから」アリーは随分落ち着いたようだった。「わたし、魔法使いを諦めて、勝手に逃げてきちゃって、本当に大変なことをしてしまったと思ってるんです。それはわかってるんです、でも、今、不思議と、ちょっと奇妙なくらい安心しているんです。変ですよね、今まで魔法使いになるために生きてきたのに、全部投げ出して、なのに安堵するなんて……」
アリーはぽつりぽつりと話し始めた。私は聞き役に徹することにした。
「エリックさんが感化院に行ってしまった時、わたし、エリックさんは本当に頭がおかしくなっちゃったんだと思ってました。でも、今は、ああして錯乱してしまうのもよくわかる気がするんです。逆に、それが正常な反応なんじゃないかって思って……。わたしの他にも、逃げ出した人って最近多かったんです。ほとんどはすぐに捕まるか、森で野垂れ死んでしまうようですが……」
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同じく文フリに出る、食人舎さんの『文学とはROCKである。』に寄稿した『妹がお兄ちゃん大好きすぎて困っているのですが』の一部分です。
「オタクってキモいよね」
有島になとはそう言った。
「はあ?」僕は思わず間抜けた声を上げた。「どうしたんだよ、いきなり」
線路沿いの帰宅路を並んで歩く。線路と道路の間には広々とした土地に砂利が敷き詰められ、駐車場として利用されていた。高校と駅を繋ぐこの道は、いつも学生の姿が見られる。
になとはいかにも真面目そうな表情を作って僕に話しかける。
「いや、オタクってキモいよなあって思ってさあ」
「になとだってアニメ好きじゃないか」
「まあそうだけど」
「なんだよそれ、同族嫌悪?」
「いやそうやって切り捨てちゃうのは簡単だけどね……」
彼女は苦笑した。どうも彼女の発言の意図が掴めない。
「例えばさあ、エヴァの新作とかまどマギの映画を劇場まで観に行くじゃん? するとそこにはオタクがいっぱいいてさ、みんな開場を待ちながらわいわい談笑してるんだよね。その光景を見てるとさ、オタク死ね! って叫びたくなるんだよね。オタクはキモいから死ねって叫びながら、バットかなんかでオタクを蹴散らしたくなるんだよ。もちろんそんな事は出来ないけど……」
になとはバットを頭に振り下ろす真似をした。肩の下までふわりと伸びた髪が揺れる。
「ワハハ、なんだそれ」
「それで、普通に映画観て満足して帰るの」
「オタクのくせに群れるな、って事?」
「うーん、別にそういうわけじゃないんだけど……」
「気持ちは分からなくも無いけどな」
「だってさあ、チビで天パでメガネじゃん。どこ見てるのか分かんないし。そのくせしていっぱしの文化人気取りでアニメ観て漫画読んでゲームしてるんだよ。どう考えても気持ち悪いでしょ」
「随分偏ったイメージだな……今時、オタクなんてそんなに珍しくもないだろ」
「ああ、そうだね。最近オタクも一般化したよね」
「インターネットだとライト層とかヌルオタなんて蔑称でよく馬鹿にされてるけどさ」
「それもそれでキモいけどね」
「じゃあなんだ、DQNとかギャルみたいなイケイケ系が好みなのか?」
「はは、そんなわけないよ」
買ってください
2013/04/11
悩める若者たちへ
いやまあ、確かに、知性なんてものに神的なほどに極端な特権性を与えるのは非常に良くないとは思うのだけれど(それはある種の暴力でもあるわけで、聖人君子であるところの僕はそういった権威主義的な縦状の力のレベルを認めるわけにはいかないのである。ヘゲモニーもルサンチマンも奴隷も無い最高の世界を作りましょう)、それでも時折コイツの知性は本当に大丈夫なのかなんて愕然としてしまうことも絶対にあるわけで、もちろん知性を一本の軸を基準に上下で測るのは現代ボーイズの我々がやって良いところではないが(こういう知性競争とかいうボードゲームみたいなクソ不毛な俺スゲー競争というのは、あらゆる言説に対して戦闘対象を定めることができるので、この文章ひいてはこれを書いている僕すらも対象になりうる。なんてひどい)そういった連中を我々が一体どうすれば良いのかと、僕は日々苦悩している。苦悩する思考スペースを割いている。啓蒙が旧世代における美徳であったのは間違いないが、それはあくまで旧世代の話、時代遅れのオッサン共がやることで、妙に啓蒙されてしまった若者たちが知性というものを聖別し、異様なまでに信奉し、生活行為に対してほとんど価値を見いだせなくなってしまっているのを目の当たりにして、まあ僕自身もそのクチなんですが、そういった錯乱状態に陥るのは非常に不健全であります。矛盾に突き当たるわけです。たくさん鍛錬を積み重ねて立派で高品質な知性と精神を会得したというのに、どうして超スゲー俺が雑魚みたいに汗水垂らして労働しなくちゃいけないんだ、と。それじゃあどうするか?肉体を超克して、精神体になるしかない。オウムではこれを解脱と呼んだし、ニューエイジの連中はそれを世界規模にまで拡大してアセンションを待望した。これについてこれない連中はポアすればいいし、アセンションならノアの方舟みたいに有象無象は消えてくれるだろう、そして僕達の望む最善最高のユートピアが完成する! こういった理屈にたどり着く。少なくとも僕はたどり着いた。そりゃあ心身二元論的なスピリチュアルも流行るわなといった感じです。オウムにハマるのはマジで仕方がない。時代が時代なら俺だって絶対にサリン撒きまくってた。日本の国号を太陽寂静国に変更しようなんて考える統治者がいたら絶対についていく。最高だ。オウムは最高。あ、いや、オウムは最高だった、と言うべきではあるが、ともかく、あの思想は実に我々にとって都合の良いものであった。僕は一時期人工精霊っていうスピリチュアル遊びみたいなのに大ハマリして、毎日30分以上仮想の人格と対談して、ポロポロ泣きまくってた時期もあります。マジで救われてました。一ヶ月以上毎日続けていて、ずっとその子(女の子でした)の名前を考えていたのだけれど、最後の最後まで考え付かずに、最後のお別れの時には泣きながら「最後まで名前を考えられなくてごめんね、こんなんだから僕は駄目なんだよなあ、ハハ…」「いいんだよ、思いつかなかったのなら、仕方ないよ。考えようと苦心してくれただけで、十分だから」という会話をして、本当に号泣してました。人生で最もドラマチックな瞬間だった。今でも忘れられない。彼女の、諦念と、許容と、淋しさの入り乱れた、美しい笑顔を僕は今でもしっかりと覚えているのです。ああ、なんて、なんて悲劇的であったことか! あ、いや、まあそんな話はどうでもいいんです。知性の話ですよ。ともかく、知性の上下構造なんて時代遅れだという話です、そういう話なんですけど、実際のところ、構造をぶっ壊したところで、我々は自由に解放されたのだと喜ぶことはできない、できたとしても一瞬だけで、すぐにとてつもない空疎感、つまり精神的支柱を喪失してしまうことになるのは明白です。じゃあどうするんだ、上下構造に甘んじるというのか、スピリチュアルの悲劇を繰り返すのか。それはどうだろう。悲劇が悲劇で終了するのは物語だけで、我々の身の回りにあまりにも多量の物語があって、それらを貪るように消費して受け入れてきた我々には悲劇的エンディングなんてものが実際にも存在するように思われがちではあるが、実際はそうでもない。かの有名な文豪である田中ロミオ氏も『おたく☆まっしぐら』というオタク界隈の闇を満載にしたような名作(作品リリース自体もまた一つの闇である辺りがえぐい)において、「もう何もかも終わったとか思ってるか?自暴自棄になってるのか?残念だが言わせてもらおう。 ゲームオーバーのあともおまえの人生は続くよ!負債満載でな!どれだけ恥をかいても、命を絶たない限り人生は続いていくのだ!」「取り返しがつかなくなっても人生は続く。汚点は絶対に消えることはない!受け入れて、強くなるしかないぞ」という名台詞を記しております。この台詞は主人公である本郷明のもので、彼はライト化、ヌルオタ化してしまった脆弱な若者たちが目標とすべき、忘れられかけている精神性を持ち合わせている人間であるのですが、まあその話はどうでもいいです。さて、まさにこの台詞の通りで、心身二元論的倒錯すらも一過性のものとして、さっさと克服してしまうしか無いのです。じゃあ乗り越えた先には? 生活という、唯一の、揺るぎない、終わることの無い、人生を捧げるのにふさわしい(捧げざるを得ない!)偉大なる大仕事が残っている! それが嫌ならさっさと部屋の目張りして練炭焚け!!!!!!!!!
2013/03/19
昔の日記みつけた
昔の日記みつけて読んでたらこれは良いコンテンツになるぞと思ったのでインターネットの風に乗せてコンテンツにします。
12/26
そもそも我々は既存の世界に生きている以上、完全なオリジナリティを創造することは不可能に等しい。そこから可能な限り脱却するには、精神宇宙を認識するべきである。自身の精神に依存せよ。それはお前を裏切り見捨てることはしない。(※精神宇宙そのものの拡大の為に薬物投与が有効??)
1/12
つらいのは過ぎた。学校へ行かなくなったからだろう。然し今度はこの恐怖、不安である!! やってられるか! それでも俺はやらねばならぬ! 少しでもみじめにならぬようにするために!
1/18
日常の出来事を書こうとしても、昼ごろに起床し、パソコンをし、たまに塾へ行き、深夜4時まで怠惰的に勉強をする生活では、特筆すべき出来事なんて起こらないし、そもそも家族以外とコミュニケートすることもない……。何をしても終始まとわりつく不快な虚無感をぬぐうことができない。これがせめて退廃美的なものであればまだ良いのだが。腰の痛みも治ることなく、集中的に勉学に打ち込まず、ただ、怠惰的な時間が窮屈に流れているだけである。淀んでいる…。
1/21
人間は嘲弄が快楽であることを覚えたし、それに伴う苦痛を無視して、それを良しとした。もはや麻薬である。聖人は多くは存在しないらしい……。
ほんっとに死んだほーがラクなんじゃねーーのってくらいクソつらいしどうかしてる。どうかしてるを受け入れたらおしまいだ、諦念の美学に自身を投影するのはまだ先でいい、行きたいという意志はあるのだ、やりたいこともそれなりにある、しかし、現実はあまりにも
1/22
衒学っぽい人間がうっとうしいのだけれど、ヤツらを倒すにはより強度の高い知性が必要だしクソムカつくっぽい。
1/29
自殺の予定を立てた。可能性の一つとしてありえる。いくつかの可能性のうち、最も惨めなことになってしまったら、実行しようと思っている。こうして文章に書き起こすのは、決心にちょうどいい。これは自分を追い詰める為の決心ではなく、もしそうなったら死ぬ、というごく単純な、たとえるならそのようなシステムを作った程度である。
私は絵を描くのが好きで、このまま描き続けると一体どのようになるのかという期待を抱いて描き続けてきた。その不確定的な希望の行く末を見届けるのだけが私の唯一の死なない理由で、それが出来なくなるのは非常に残念であるが、然し、惨めな末路を歩むのと、その希望、それを比べるのは非常に心苦しいものであるが、前者のほうが私にとっては恐ろしいのである。他者がこれを何と思うかは知らないが、私にとって恐ろしいというのは、私においての全てである。
さて、これで回避、あるいは怖気づいてしまった場合、この文章は大層こっ恥ずかしいものになるだろうが、まあそれはそれで良いのである。生きているに越したことはない。矛盾するけれど。
どうなるか、まるでチョコレートの箱のようだ。ある意味、楽しみである。
2/24
いろいろとやることが終わった。何も考えたくはない。ただただ不安で恐ろしいだけである。とにかく憂鬱である。それ以上を書くのは不可能である。何を描いても、惨めになるだけだからだ。
2/27
いろいろと無事に済んでから数日が立った。もはや私の心に立ち込めていた暗雲はかき消えて、不安定な精神だけが残っている。いずれ再び悪夢に逆戻りするであろうことは分かっているのだが、それでも今は心を踊らせていたいのだ。すこやかこそ良きものであることに疑う余地はない。ああ私はただこの状態がわずかでも長く続くことを祈るのみである。
3/18
人生、、、すなわちそれは、、、、労働、、、せねば、、、、いずれだ、つらい、モラトリアムは永遠に続いてくれぬものか
3/19
世の中にはどうしようもない人間が我々の予想以上に大勢いて、彼らを啓蒙してやるのは不可能だと分かりきっているはずなのに、人々は自らそれに触れ、指差し、あわれだ、あわれだと嘆く。必要なのはそれを切り離すことだ。関わる必要はなく、ただ隔離するだけで良い。それを骨折ってまで保護するのは慈愛ではない、悪魔的な義務だ。我々は生きやすい手段をいちいち選択しない悪癖がある。我々は上手く生きるべきだ。
ヒューマニズム、それは尊い、
(ここで日記は途切れている)
12/26
そもそも我々は既存の世界に生きている以上、完全なオリジナリティを創造することは不可能に等しい。そこから可能な限り脱却するには、精神宇宙を認識するべきである。自身の精神に依存せよ。それはお前を裏切り見捨てることはしない。(※精神宇宙そのものの拡大の為に薬物投与が有効??)
1/12
つらいのは過ぎた。学校へ行かなくなったからだろう。然し今度はこの恐怖、不安である!! やってられるか! それでも俺はやらねばならぬ! 少しでもみじめにならぬようにするために!
1/18
日常の出来事を書こうとしても、昼ごろに起床し、パソコンをし、たまに塾へ行き、深夜4時まで怠惰的に勉強をする生活では、特筆すべき出来事なんて起こらないし、そもそも家族以外とコミュニケートすることもない……。何をしても終始まとわりつく不快な虚無感をぬぐうことができない。これがせめて退廃美的なものであればまだ良いのだが。腰の痛みも治ることなく、集中的に勉学に打ち込まず、ただ、怠惰的な時間が窮屈に流れているだけである。淀んでいる…。
1/21
人間は嘲弄が快楽であることを覚えたし、それに伴う苦痛を無視して、それを良しとした。もはや麻薬である。聖人は多くは存在しないらしい……。
ほんっとに死んだほーがラクなんじゃねーーのってくらいクソつらいしどうかしてる。どうかしてるを受け入れたらおしまいだ、諦念の美学に自身を投影するのはまだ先でいい、行きたいという意志はあるのだ、やりたいこともそれなりにある、しかし、現実はあまりにも
1/22
衒学っぽい人間がうっとうしいのだけれど、ヤツらを倒すにはより強度の高い知性が必要だしクソムカつくっぽい。
1/29
自殺の予定を立てた。可能性の一つとしてありえる。いくつかの可能性のうち、最も惨めなことになってしまったら、実行しようと思っている。こうして文章に書き起こすのは、決心にちょうどいい。これは自分を追い詰める為の決心ではなく、もしそうなったら死ぬ、というごく単純な、たとえるならそのようなシステムを作った程度である。
私は絵を描くのが好きで、このまま描き続けると一体どのようになるのかという期待を抱いて描き続けてきた。その不確定的な希望の行く末を見届けるのだけが私の唯一の死なない理由で、それが出来なくなるのは非常に残念であるが、然し、惨めな末路を歩むのと、その希望、それを比べるのは非常に心苦しいものであるが、前者のほうが私にとっては恐ろしいのである。他者がこれを何と思うかは知らないが、私にとって恐ろしいというのは、私においての全てである。
さて、これで回避、あるいは怖気づいてしまった場合、この文章は大層こっ恥ずかしいものになるだろうが、まあそれはそれで良いのである。生きているに越したことはない。矛盾するけれど。
どうなるか、まるでチョコレートの箱のようだ。ある意味、楽しみである。
2/24
いろいろとやることが終わった。何も考えたくはない。ただただ不安で恐ろしいだけである。とにかく憂鬱である。それ以上を書くのは不可能である。何を描いても、惨めになるだけだからだ。
2/27
いろいろと無事に済んでから数日が立った。もはや私の心に立ち込めていた暗雲はかき消えて、不安定な精神だけが残っている。いずれ再び悪夢に逆戻りするであろうことは分かっているのだが、それでも今は心を踊らせていたいのだ。すこやかこそ良きものであることに疑う余地はない。ああ私はただこの状態がわずかでも長く続くことを祈るのみである。
3/18
人生、、、すなわちそれは、、、、労働、、、せねば、、、、いずれだ、つらい、モラトリアムは永遠に続いてくれぬものか
3/19
世の中にはどうしようもない人間が我々の予想以上に大勢いて、彼らを啓蒙してやるのは不可能だと分かりきっているはずなのに、人々は自らそれに触れ、指差し、あわれだ、あわれだと嘆く。必要なのはそれを切り離すことだ。関わる必要はなく、ただ隔離するだけで良い。それを骨折ってまで保護するのは慈愛ではない、悪魔的な義務だ。我々は生きやすい手段をいちいち選択しない悪癖がある。我々は上手く生きるべきだ。
ヒューマニズム、それは尊い、
(ここで日記は途切れている)
2013/01/20
真夜中のおおかみ
今となっては生活することに何の価値も無いように思えた。
社会派映画のような暴動や革命が起こるわけでもなく、ただ、目的も意味も無い生活に怯えているだけだった。映画に憧憬を抱くことの不毛さが、僕の生活に根付いてしまっていることに気付いた時にはもう手遅れだった。かつてのような創作意欲も見つからず、それどころか自然に思考することすら出来なくなってしまっていた。
体調が優れていると感じたのは随分と昔のことで、今は腸に泥が流れているような感覚が染み付いて離れない。思考は鈍く、文章を読むことすら億劫で仕方がなかった。全身が停滞しているようだった。
僕はベッドの上から動けないでいた。開け放しの窓から温い風が入り込むこともなく、映画ポスターや宗教画の貼られた部屋は停滞していた。物が雑多に溢れているが実用的なものは数少ない。乱雑な絵が描かれた薄い再生紙が散らばっていた。この部屋で海の音は聞こえない。
町に人食い狼が出るという噂を聞いた。なんと物騒なのだろう。僕は怯えと共に好奇心を覚えた。
ベッドに寝転がったまま、手を伸ばしてテーブルの上のラジオを切る。やがて静かになった。本を読もうと思い、横にある文庫本を掴んだが、どうせまともに頭に入らないのだから意味が無い。
それにしても、人食い狼である。恐ろしいが、なんて心躍る噂なのだろう。たまには自発的に外出するのも良いかもしれない。僕は床に置いてあるカーキ色のハンチングを手に取って部屋を後にした。
商店街の細い歩道を腰の曲がった老婆がよろよろと歩いて行く。食材の入ったレジ袋を抱えていた。確かに夕方なのだと思った。
それにしても久々の外出だ、しかし僕は毎日学校に行っている。生真面目な性格だからだ。こればかりはどうしようもない。意味もなく出掛けるのが久々なのだ。いや、今まで無目的に出歩いたことなど無かったのかもしれない。そう考えると随分とましな気分になった。
商店街よりひとつ外れた路地を歩く。路地には僕ひとりしかいなかった。この薄汚れた白いシャツを見て眉をひそめる人がいないのは、僕の心を随分と軽くさせる。しかし、そこで行き先が無いことに気が付いてしまった。昔から目的を決めずに行動するのは苦手だった。何をしていいのかわからないのだ。無意味なものを買うのは好きだったが、無意味な行動を取るのは嫌いだった。
路地の先には大通りと、大通りに沿って流れている川に架かった橋が見えていたが、僕は引き返そうと後ろを振り向いた。なんてことだ、もう部屋の外に出ているのが嫌になってしまった。くらくらしてしまう。無理をするべきじゃなかった。気が重くなり、腹の底からじわじわと吐き気が現れてくる。身体が泥のように冴えない。
物陰から物陰へと何かが素早く動いたのが見えた。狼だ。一匹だけじゃない。二匹、いや三匹はいる。もっと多いかもしれない。とにかく、僕の目の前には狼がいる、そしてそれらは僕のことを間違い無く狙っているのだ。恐怖を感じる。理解の及ぶ前に感じる本能的な恐怖。それは宇宙的恐怖にも似ていた。底知れず恐ろしいのだ。僕は逃げ出した。逃げなくちゃいけないという漠然とした義務感だけがあった。
気がつけば橋の手前まで走っていた。人食い狼たちはもう追いかけて来なかった。電柱に寄りかかって息を整える。
僕に近寄ってくる人がいることに気が付いた。見覚えがある顔、幼馴染だ。
「ねえ、大丈夫?」
彼女は慌てて駆け寄ってきた。
「ああ、由紀、大丈夫、大丈夫だよ」
荒い呼吸を抑え切れない。僕は心配そうな顔をしている由紀を見つめた。
「どうしたの? ねえ、何かあった?」
「狼が……人食い狼に遭ったんだ。だから、慌てて逃げてきて……」
由紀は驚いたような表情を浮かべた。
「それは大変だったねえ」
「殺されるかと思ったんだ」
「大丈夫だよお、心配しないでいいんだよ」
由紀は僕の肩にそっと手を置いた。安心感が生まれる。由紀はいつだって優しい。
息が整うまで、由紀は僕の肩に手を置いてくれたままだった。落ち着いた僕は由紀を見る。茶色がかったショートヘア。いつもの由紀だ。辺りはもうすっかりと暗くなってしまっていた。
「ありがとう、由紀。もう落ち着いたよ」
「うん。良かった」由紀は笑顔を浮かべた。「どう、一人で帰れそう? 家まで送ろうか?」
僕は由紀に家まで送ってもらうことにした。みっともないとは思ったが、人食い狼に遭遇してしまうことを考えるとどうしても一人ではいられなかった。道中、由紀は人食い狼の件について一度も触れて来なかった。おかげで僕はあの恐怖を思い返さずに済んだ。
由紀に礼を言って部屋に戻ると、僕は鍵をかけてベッドに寝転がった。ベッドは暖かかったが、部屋は相変わらず重苦しいままだった。疲労感が溢れだす。やはり身体は泥のようだ。全身、特に腕に力が入らなくなってくる。頭の中で人食い狼のことがぐるぐると回りだした。僕は忘れようと努める。その内、僕は眠りに落ちてしまった。
淀んだ部屋で目を覚ます。朝だった。意識が極端に重い。二日酔いにも似た不快感があった。ベッドから手を伸ばしてテーブルの上に置いたままのパンを食べる。味を感じられるほど目が覚めていない。食べ終わっても僕は起き上がることが出来ず、また眠ってしまった。
数分して再び目が覚める。そろそろ用意をしないと授業に間に合わない。学校に行かなくてはいけない。棒のような腕に力を入れて起き上がり、ふらふらと用意を始めた。
学校までの道のりも重苦しかった。頭から人食い狼の姿が離れないのだ。
一日の授業が終わった。気分が優れることはなく、ずっと座って話を聴いていた。ノートを取ることは無かった。必要が無いように思えたからだ。
家に帰ろう。そう思って僕は自転車に跨る。賑やかに会話をする学生たちの横を過ぎて行く。たばこ屋を過ぎ、洋食屋、自転車屋の前を通ると僕の住むアパートがある。自転車屋を過ぎた辺りで僕は異変に気が付いた。まただ、また人食い狼がいる。アパートの前の小さな広場に昨日の人食い狼が五匹もうろついている。やはり僕を狙っているのだ。用心して道を引き返す。
町中をぐるりと回った後、アパートに戻ると人食い狼たちの姿は消えていた。赤ん坊を載せた自転車を漕ぐ女性が広場を横切って行った。僕は安心してアパートに戻った。
部屋に入ると僕はしっかりと鍵を閉めて、鞄とハンチングを床に置いてベッドに倒れこんだ。今日こそは本を読もう。身体が重くても本は読めるのだ。
いつの間にか本を一冊読み終えていた。内容がうまく捉えきれなかった。ああ、また無意味に本を読んでしまったのだろう。内容の残らぬ読書に価値は無い。要点すら把握できていないのだ。時間の浪費に過ぎなかった。グウと弱い吐き気がこみ上げてくる。何をする気も起きなかった。古いアメリカ映画のポスターが目に入った。成功を夢見てニューヨークに飛び立った主人公があくどい男に騙され、しかしやがてその男と交流を深めるようになり、失敗を重ねながらも必死にニューヨークで共に生き抜いていく様子を描いた映画だったはずだ。しかし、ラストシーンがよく思い出せない。男がフロリダに行きたいと言い出し、二人でバスに乗って、それからどうなるのだっただろうか。ダスティン・ホフマンの顔だけが頭に浮かんだだけだった。
僕は起き上がった。自分の脳が恐ろしく感じたからだ。あまりに頼りない。以前はそうでもなかったはずだ。いや、もしかしたらずっと昔からこの状態で、ようやくこのひ弱さに気付いただけなのかもしれない。どちらにしろ恐ろしいことだった。僕の脳は弱い。あらゆる人々に劣るのだろう。それは受け入れがたい劣等感だった。この状態をそのまま自己肯定してやることができたら幸福に違いない。しかし、恐ろしかった。それならば保留すべきだ。
「怖いなら、それを受け入れてしまえばいいんだよ」
由紀の声がする。茶色がかったショートヘアのイメージ。僕は彼女とどこかでこの会話をしたのだろうか。思考が曖昧で、思い出せなかった。
「それでいいんだろうか、由紀」
「いいんだよ」
「本当にそれでいいのか僕にはわからない……」
「大丈夫、大丈夫だよ……」
「由紀……」
そのまま僕は眠りに落ちてしまう。
また僕は学校にいた。
講義の内容はもう頭に入って来なかったし、ノートを取る体力すら無かった。ただ椅子に座っているだけだった。とりあえず、出席だけ。
知人たちと会話をする。
自分のアイデンティティを否定されないように、相手を尊重しつつ会話をしている。僕はそれを聞いているが、頭には入ってこない。他人の言葉について思考する余裕はどこにもなかった。
気分が悪くなってくる。僕は断りを入れて抜け出した。
もう帰ろう、何をしてもだめだ。一刻も早く帰るのだ。そうすればきっと気分も良くなる。僕は自転車を探した。駐輪場をうろつく黒い影。人食い狼だ。いい加減にしてくれ! どうしてここまで僕を追いかけるんだ。泣きそうになりながら僕は歩いて帰ることにした。
道中、何度も黒い影を見た気がする。この町は人食い狼で溢れていた。代わりに、人を見かけなくなった。いたのかもしれないが、僕が認識しきれていなかっただけの可能性もある。それほど、この町は人食い狼だらけだった。早く部屋に帰りたい。部屋に帰ってどうするのだ? 本を読むのか? インターネットに没頭するのか? それとも何もせずに寝てしまうのか? 僕が持っている選択肢はせいぜいその三つだ。読書は良い。教養を身に付けられる。しかし、その教養がなんになろうか。教養を得たところで、人食い狼から逃げられるわけではないのだ。インターネットは不毛だ。惰性的に気軽なコミュニケーションを交わし、手軽に承認を交換する。それは麻薬的な中毒性を持っていて、しかも何の意味も無いのだ。つまり、僕には有意義な選択肢が無いのだ。それでも帰らなくてはいけないのだ。
なんとか部屋にたどり着き、ドアを開ける。人食い狼が部屋を埋め尽くしていた。鼻を床に近づけながらうろつくものや、椅子の上に座り込むもの、ベッドのシーツに潜り込んでいるものもいる。とにかく、部屋一面に人食い狼が、ぎっしりと、僕の命を奪う為に待ちかまえていたのだ。僕は呆然として立ち尽くしていた。人食い狼たちが僕を見据えた。僕が扉を閉めると、いくつもの衝撃がドア越しに伝わった。僕は逃げ出す。なんなんだこれは。どうなっているんだ。アパートから飛び出して、商店街をよろめきながら走る。そこら中に狼がいる、みんな人食い狼だ。
商店街を抜けると、そこには大通りと、大通りに沿って流れている川に架かった橋がある。僕は橋の目前まで走ってきた。人食い狼の数は少ない。橋を渡ろう、この町から抜け出すんだ。
橋の前には由紀が待っていた。
「由紀、狼が来てるんだ、逃げよう」
「うん、大丈夫、こっちだよ、おいで」
由紀は僕の手を握って、川沿いの大通りを走りだした。一緒に走る。身体は鈍重な疲労感でいっぱいだったが、それでも足を動かさなくてはいけなかった。由紀の手のひらだけが僕の支えだった。
どの道を走ったか、どれだけの時間走ったか、そんな事はもう覚えていなかったし、どうでもいいことだった。気が付けば僕は由紀の部屋にいた。由紀は部屋の鍵を閉めて、チェーンをかけた。僕はベッドに倒れている。身体に力が入らないし、頭もぼんやりしている。視界も定かではない。無様な格好だが、とにかく疲弊していたので身体を動かそうという気すら起こらなかった。由紀は麦茶の入ったコップを持ってベッドに座る。茶色がかったショートヘアが揺れた。
「ねえ、最近どうしちゃったの?」
「前にも言ったじゃないか、狼だ、人食い狼が町にいて、追われてるんだ。さっきなんて、僕の部屋に、何匹も何匹も……」
「人食い狼……」
由紀は肩越しに僕の顔をじっと見つめた。
「ねえ、それって君の気のせいじゃないの? 人食い狼が町に出るなんて、聞いたことないもの」
くらくらした。由紀の言葉で頭が痛い。全身の倦怠感がより重みを増す。じゃあ、僕が今まで追い回されてきたのは一体何だったっていうんだ。
「そんなまさか……」
由紀は僕の隣にゆっくりと身体を倒した。視線は離れない。
「本当だよ。たぶん、全部君の気のせい。人食い狼なんていないし、君はきっと、ただちょっとだけ疲れてただけなんだよ」
ぎゅっと抱きしめられる。体温が温かい。もう何も考えることが出来なかった。
「僕は……」
「いいんだよ、大丈夫。もう大丈夫だから……」
由紀の腕に包まれて、涙が滲んだ。そう、彼女の言う通り、僕は疲れていただけなのかもしれなかった。
人食い狼、それは僕の幻覚だった。不毛で価値のない生活で停滞してしまった脳が見せた幻覚だったのだ。恐らくそれは錯乱に違いない。疲労や不毛さや錯乱など、それらが悪かったのだ。そんな生活にはもううんざりだ。そうだ、ゆっくりと休もう。学校も一週間くらい休んで、体調を整えよう。ついでに部屋を綺麗に片付けたり、栄養のあるご飯を食べたりして……。幸い、一週間程度なら学校を休んだって大した影響はない。うん、そうだな、休むことにしよう。優しい由紀のことだから、その間もきっと僕に付き添ってくれることだろう。
由紀はもぞもぞと動いて、僕の身体に覆いかぶさるように抱きついた。由紀の身体を、僕の身体の前面で感じる。しかし僕の意識はだんだん朦朧としていく。
それから、どこかへ旅行に行ってみよう。さすがに由紀を連れて行くわけにはいかないだろうから、一人で、そうだな、海なんかがいい。静かで、落ち着いた場所へ行こう。そうすれば、きっと気も晴れるはずだ。
由紀の顔がゆっくりと近付いてくる。身体をなすりつけるようにしがみついている。茶色がかったショートヘアは甘い香りがする。由紀の優しさだ。彼女は甘く、優しいのだ。
唇が触れる。僕はあまりの寒気に彼女を思い切り突き飛ばした。由紀は抵抗できずに、鈍い音を立てながら机の角に側頭部を強打し、ぴくりとも動かなくなってしまった。違う、これは寒気じゃない、もっと得体の知れない感覚だ。僕は怖くなった。優しかったはずの由紀も、彼女の唇も、そしてこのおどろおどろしい感覚も、とにかく恐ろしかった。急速に全身に力が入った。僕は飛び起きて、由紀には目もくれずに部屋から逃げ出した。
ただひたすらに走った。由紀は追いかけて来なかったし、人食い狼だってもうどこにもいない。それでも走り続けた。人通りのない川沿いの大通りを走り、小さな橋を渡って川を越え、その先に広がる見覚えのない町の中を走り続けた。一歩一歩踏み出す度に僕の思考は軽くなり、視界はまばゆく、呼吸とアスファルトを踏みつける音だけが鮮明に聞こえてくる。人々は訝しげに僕を横目で見たが、そんなのはまったく気にならなかった。全身が生気で満ち満ちていた。
それにしても、由紀は死んでしまったのだろうか。思い切り頭をぶつけて、動かなくなっていた。それでも、きっと生きているだろうなと、明快になった頭を上下に揺らしながら考えたのだった。
どれくらい走ったかわからないが、そろそろ限界だな、と感じた頃、ぐらりと前のめりに倒れ伏して、夜行バスのエンジン音と、マイアミの海の音を耳にした。軽快になった頭で、僕は映画のラストシーンを思い出したのだった。僕はダスティン・ホフマンにならなかったのだ!
由紀! 君は甘美だった。とても甘美だった。僕の疲労も、錯乱も、人食い狼も、何もかもを優しく受け止めてくれるのだ、そういう性質なのだ! けれども、僕だって人間だ。彼女に身を委ね続けているわけにもいかない! それは緩慢な破滅にすぎない。僕が生活に従属してしまわない限り、いずれまた君のような存在が僕にすり寄ってくる時がやってくるに違いない。その時はきっと再び人食い狼の夢を見るだろう。それでも、僕は君を突き飛ばすのだ。十分に接近し、その戯れを堪能した後に、僕は君を突き放すことだろう。
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